「鮮度が良い」からおいしいとは限らない

こんにちは、水産業界で働いているホタテ王子です

鮮度がすべてではない

日本には素材の味や鮮度の良さを大切にする文化があり、魚は肉や野菜と比べ最も新鮮さを重視する食材です。

今はコールドチェーンの発達により、昔では生で食べらレなかったような魚も、かなりの種類を生食できるようになりました。

この背景には、新鮮でおいしい魚が高価で、数十年前までは海の近くでしか味わうことの出来なかったごちそうだったことがあげられます。

しかし、この「鮮度」への進行ともいえる強い先入観が、時に魚の本当においしい味わいを見失わせることにもつながっています。

新鮮=熟成されていない

例えばいけすで泳いでいた魚を、料亭などでその場で締める活け造り。私語すぐはアルカリ性でうまみは少なく、食感こそあるものの実はおいしいとはいえません。

それでも「新鮮=おいしい」というおもいがあり、この活け造りがもてはやされていました。これは鮮度信仰が味覚を上回り、本当のおいしさに気がつかないまま「おいしい」と思っている典型的な例です。

死後一定時間経過したらおいしい魚

たい、ひらめなどの白身魚、また大型のマグロ、ハタなどの魚は、締めてから(死んでから)一定の時間を経過することでうまみが増します。

魚を締めると身が硬くなるタイミング(死後硬直)があり、ここで旨みに変化が起こります。食感もこりっとしたものに変わります。

なぜ死後一定時間経過した魚の方がおいしいのか

なぜ死後一定時間経過した魚の方がおいしいのかというと、それは、魚の身に含まれる「ATP]という成分に由来します。

ATPという成分は、この死後硬直するタイミングで旨み成分である「イノシン酸」に分解されます。この硬直の初期にイノシン酸の量がピークに達するポイントがあり、そこが魚の本当においしいタイミングであります。

低温冷蔵していても、青魚は硬直までの時間が非常に短いのですが、白身魚のまだらは2~8時間、マダイは24時間後ともいわれています。大型のマグロなどでは、なんと2週間ほどで旨みのピークに達する場合もあります。

牛肉も落としてすぐは旨みがなく、味もしないといいますが、魚も同様に熟成することで旨みがますのです。

とはいえ、タイミングが大切

とはいえ、このタイミングを逃すと旨みはあるものの食感がなくなってしまいます。

また、転園や洋食、産地などによってこのおいしいタイミングはばらばらです。高級寿司点などでは、このタイミングを見極めて熟成させ、おいしさのピークで提供しています。

アジやイワシなどの青魚を生で食べるなら、確かに鮮度は大切です。

しかし、白身魚や大型魚のように熟成することでおいしくなるものも意外に多いということを覚えておきましょう。

締め方の種類

野締め

底引き網などで大量に獲れたものがそのまま死んでいった魚のこと。もっとも安価。イワシやアジなどの小さな大衆魚におおく、獲れてから熟成が進んでいる。死ぬまでに暴れたりするので身が焼けたり、旨み成分のATPを消費している場合が多い。

活け締め

獲った魚を一定期間いけすなどで生かし、使用するときに即死させたもの。もしくは水揚げ時に即死させたもの。刃物で血管や神経を切ることで血抜きなどが行われている。生きているような食感があり、鮮度も落ちにくい。養殖物ではほとんどが活け締めされて出荷される。

活魚

文字通り生きている魚。死なせないためには大量の水が必要なので輸送の債のコストが高くなる。高い鮮度とおいしさのピークを提供する人が設定出来るメリットがある。