醸造学特別講義~一ノ蔵酒蔵見学~
こんにちは、青森県平内町のホタテ王子こと塩越遼太です!
1/9.10で行われた『醸造学特別講義』についてまとめました
微生物と食品加工
微生物による食品との関わりについてお話しする前に「発酵と腐敗」について
発酵≒腐敗 同じ微生物の作用でも目的で反対の効果となる
(具体例)乳酸発酵・・・エタノールを酢酸(お酢)に変える反応
これは食酢製造においては発酵(有益)ですが、酒造においては腐敗(有害)となります
同じ微生物が行う反応でも人間にとって有益かどうかで使い分けられています
醸造微生物に期待する役割
酵素の産生を期待するモノの例
・酒や味噌醤油醸造において麹カビが生産するアミラーゼ、プロテアーゼ等の加水分解
代謝産物を期待するモノの例
・酒造において酵母が精製するエタノール
・焼酎において黒鉱慈訓が生成するクエン酸
・ヨーグルトにおいて乳酸菌が生成する乳酸
などなど
ではこれら微生物による醸造(発酵)食品の効果には「風味の創造」「栄養の改善」「保存性の改善」「機能性の付加」などの効果を与えてくれます。
日本における主な醸造食品には「味噌」「醤油」「酢」「納豆」「鰹節」「チーズ」「ヨーグルト」などこれらの食品はすべて微生物の働きによって醸造(発酵)され製造されています。
種類の製造方法
酒造でのアルコール発酵の主役は『酵母』です。たとえばワインなどではブドウの果汁に含まれる「ブドウ糖」を酵母がそれを栄養源としてアルコール発酵を行いアルコールとCO2を生産します。しかし日本酒やビールのように米や麦からアルコールを造りたいときに、これらはブドウ糖よりも大きい分子の「デンプン」として存在しています。酵母はデンプンのように大きな分子を食べることはできません。このデンプンをブドウ糖に変えるために必要な作業が「糖化」と呼ばれるステップです。
僕の手描きのイラストですが、こんなイメージです。
この糖化に必要なモノが、ビールやウイスキーだと「麦芽」、日本酒や焼酎だと「カビ(麹)」、君の名はに登場する口噛み酒だと「唾液(アミラーゼ)」となるわけです。
清酒の歴史
今では日本の大定番となっている日本酒ですがその歴史は深く、縄文時代中期の遺跡の土器からヤマブドウの種が見つかりこれが果実酒を作っていた痕跡ではないかと考えられています。その後の稲作伝来後から米の酒が出現したと考えられています。(口噛み酒や麹による酒)
魏志倭人伝(中国3世紀)では倭人(日本人)の総裁に関する記述の中に「喪主号泣し、他人は歌舞飲酒する・・・」と
喪主そっちのけで宴会に力を注いでいたのでしょうかね・・・笑
また八岐大蛇(ヤマタノオロチ)討伐の際、スサノオノミコトは「八塩折の酒」を醸してヤマタノオロチを酩酊させ倒す作戦で退治したとのこと。
万葉集にも酒の歌が数多く登場します
大供旅人(万葉集三巻)
験(しるし)なき、ものを思はずは、一杯(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらしく
→意味のないものを思うくらいなら濁酒を飲んでいる方がましだ
これ以外にも古代のひとは生活の要所(ハレの日)でお酒を楽しんでいたそうです。他にもたくさんあるので、興味のある方は調べてみてくださいね。
平安中期に作られた「延喜式」には朝廷用に作る十数種類のお酒の仕込み方がマニュアル化されています。
鎌倉時代から安土桃山時代にかけて寺院などで酒造が盛んに行われ、技術的には現在の原型が完成されたとされています。
江戸時代には工場制手工業の導入による効率化、季節労務形態の定着、杜氏制度の確率、火入れ、柱焼酎、炭素濾過、三段仕込みの技術の完成
と、江戸時代に酒造システムの原型はほぼ完成しました。
そして明治時代になり大蔵省管轄の醸造試験場が誕生し技術の進歩がよりいっそう加速していき、現在につながっています。
清酒製造の特徴
清酒の製造には以下のような特徴があります
- 米麹の使用
- 並行複発酵
- 開放形の発酵
- 高濃度仕込み
- 三段仕込み
- 低温長期発酵
(引用:大関酒造)
アルコールを作るために酵母が必要となりますが、ここでは酵母と呼ばず『酒母』と呼びます
酒母とは発酵開始に必要充分な量の酵母を純粋培養し、もろみを低pHに維持するための酸の供給源となるものです。
酒母には製造方法により分類され
・生もと系酒母:乳酸発酵により乳酸を発酵するもの(生もと、山廃酒母など)
・速醸系酒母:酒母製造時に乳酸そのものを添加したもの(速醸酒母、高温糖化酒母など)
もろみの三段仕込みは三段と言いつつ一つのもろみを造るまでに4日を要し「添」「踊り」「仲」「留」そして発酵というプロセスに移る。
以上の作業を1日ごとにずらしながら酒の仕込みを行っていく
発酵以降は早いもので1週間、長いものだと3年以上寝かせてから商品として出していく。
おいしい日本酒を作るために
おいしい日本酒に大切なものが「お米」
日本酒のために作られているお米を『酒米(酒造好適米)』と言います。
酒米の理想とされる条件
- 大粒であること
- 心白米粒の中心部に発現すること
- 高度に精米してもくだけないこと
- 適度な吸水性を持つこと
- 麹が作りやすいこと
- 適度な消化性(もろみ中での溶けがいいこと)
- タンパク質含有量が少ないこと
- 目的とする酒質を得やすいこと
- 品質の高い米が安定して入手可能なこと
があげられる。
この中で「タンパク質含有量が少ないこと」はなぜかと言うと、多いと
- 蒸米での麹菌の繁殖が過度になり麹の品質に影響する
- もろみ中でタンパク質は分解してアミノ酸になるため、アミノ酸の多い酒になる
- アミノ酸の多い酒は苦みなどの雑味が多い
- アミノ酸の多い酒は着色や香味劣化が早い
- 高級酒ほど過度のアミノ酸生産を避ける必要がある
酒米における心白の効果
- 白米に適度な吸水性をもたらす
- 蒸米に麹菌が食い込み、良い麹ができる
- もろみ中で蒸米の溶解性が良い
- 大きすぎたり、中心あら偏った心白は精米時に砕米発生の原因になる
なぜ微細な胴割れでもだめなのか
- 精米時に砕米発生の原因となり、真精米歩合および精米歩留まりが減少する
- 白米の胴割れはいかに微細でも浸漬時に亀裂を生じ、砕米となるほかに不均一な吸水をまねく
- 砕米や不均一な吸水は蒸米の品質を著しく損なう
- 蒸米の品質は麹造りやもろみ中での溶解に決定的な影響を与えるため、最終的に酒の品質に大きな影響が出る
日本では様々な酒米がつくられてきたが品評会などでは1936年に育成が開始された『山田錦』が圧倒的に使用されています。
現在でもおいしい日本酒を作ろうと日々品種の改良が行われています。
いざ一ノ蔵へ!
さぁ、いろいろと講義を聴いた後はいざ一ノ蔵へ
一ノ蔵|宮城県の伝統的な手づくりの日本酒蔵一ノ蔵
宮城の伝統的な手づくりの地酒を醸造している「一ノ蔵」の公式サイトです。低アルコール酒「ひめぜん」、発泡清酒「すず音」などの商品紹介や、より一ノ蔵の日本酒を楽し…
バスで揺られること一時間半
宮城県大崎市の山奥にどーんとそびえる工場
一ノ蔵は昭和48年に宮城県内の4つの酒蔵が合体しできた比較的新しい酒蔵。創業以来手作りにこだわり、清酒製造の機械化が進んでいる今でも職人の手作業で出荷するほとんどのお酒を造っているという、すごい情熱。。。
また酒造り以外にも環境活動の実施や、日本酒大学の開講、地元住民への年に一度の蔵開放、一ノ蔵を楽しむ会を全国で実施するなど、たくさんの活動に積極的に参加し、地元に愛される酒蔵になっています。
さて、社員の方からたくさんの愛のこもったトークと、酒蔵ならではの苦労話などを聞いた後はメインの懇親会!
懇親会の前に利き酒体験を行いました。
お酒の種類と僕の個人的一言
- 純米酒・・・癖が強い
- 本醸造酒・・・酒!ってかんじ。
- 純米大吟醸酒・・・はぁ...おいしい
- 山廃純米酒・・・結構癖が強い
- 生酒・・・フルーティー
- 熟成酒・・・なんじゃこりゃ!ってくらい癖が強い
- 低アルコール酒・・・もはやジュース
(僕の言語力ではしっかりと表現できません...笑)
普通の人ならちゃんと酔っ払えるくらいの量を利き酒した後に本番の懇親会
社長直々の乾杯挨拶の後みんなでわいわいと
普段あんまり話さない別分野のコースのひとともお話ができ、そのなかになんとこのブログを見てくれている子がいたという、なんだか恥ずかしい気分になりました(照)
日本の時代と供にあり続けてきた日本酒文化
青森にもおいしいお酒はたくさんありますので是非調べてみてくださいね!
http://www.sake-tsujimura.com/
リンク先は僕の地元の酒屋さんの『辻村酒店』さん
是非皆さんもただ飲むだけではなく、日本酒の歴史や作り方を知った上で飲むとよりいっそう楽しさが広がるのではないでしょうか。
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昨年お世話になった方々や、最近の情報収集のため東京にいきたい!しかし通帳にはお金がない...
是非皆様のご協力お願い致します...!
https://polca.jp/projects/hAEjYurXDAp
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青森県平内町のホタテ王子こと塩越遼太のぶろぐ
EKITUZI Student Train 代表
1月14日に焼き肉屋さんとコラボします!6時オープンですので是非遊びに来てみてください!